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オープンダイアローグについて

オープンダイアローグについていくつか気になる情報があって斉藤環著「オープンダイアローグとは何か」(医学書院)やオープンダイアローグを特集した「現代思想」(青土社)を買い求めました。ハフィントンポストの保坂展人氏の記事も然り。また、森川すいめい著「その島のひとは、ひとの話をきかない 精神科医自殺希少地域を行く」(青土社)の最終章はオープンダイアローグについて書かれてあります。どれもがたいへん興味深い内容です。そして、それは精神科医療にとどまらず社会生活や学校教育の場においてもそのエッセンスが活用できるように思われ、実際、学校教育の場ではすでに行われてきているのではないかと思うのです。先月、沼津市で行われた聞き書きワークショップとも共通するエッセンスがあるように思っています。

オープンダイアローグの核となる考え方、仕組みについては、斉藤環著「オープンダイアローグとは何か」(医学書院)の書評で橋本久仁彦氏が端的に記しているように思います。「不確実性への耐性」「対話主義」そして「ポリフォニー」です。この3つの言葉、フレーズは、物事はそもそも予定調和的に1点に収束するものではないというメッセージを纏っています。私は「物事」という現実の事象を示す言葉を用いましたが、オープンダイアローグは人の心そのものを支える仕組みとして営まれるものであってなおさらのことです。気持ちが揺れるからこそ人と人との関係は進み、ときには決別などの形に進む。しかし、そこで止まるのではない。また動き、進む。何か固定されたものがあるかのように思えるのは人の心が動かないからではないのでしょうか。こうして書き進めると至極当たり前のことのように思えるからまた面白いし、そもそもそんなものだと思えることが大事ではないかということになります。岡檀氏と森川すいめい氏の「自殺希少地域」についての著書2冊はそのことを明らかにしています。

思い浮かぶ映画の台詞があります。ジブリの映画「紅の豚」で、真っ赤な飛行艇で戻ってきたポルコを仰ぎ見ながらアメリカの飛行機乗りカーチスのプロポーズを断るジーナの台詞です。「ここではあなたのお国より、人生がもうちょっと複雑なの」

橋本氏の書評の見出しは「非構成的エンカウンターグループの豊かさ」であり、「構成的エンカウンターグループ」との対比がベースにあるといえるでしょう。その中に「あらかじめグループのねらいや目的を明確化し,アイスブレークやウォームアップ,出会いや気づきのワークなど多数の心理テクニックを用いて,決められた時間内に所定の効果をあげるやり方のほうが,学校や企業などでは歓迎される。」とあるように、現在の様々な場面で予め結果ありきの枠組みの中で物事を進めていこうとする傾向は多々見受けられます。しかし、そのことの限界がそこかしこで顕在化してきていることを認めざるを得ない状況になってきていると考えます。こうした状況下で底力を発揮し得るのは不確実性の中で対話しながら多様な考え方がありつつ物事を進めていくねばり強い取り組みではないでしょうか。必ず明日があると考えよう。

「Tomorrow is another day.」とはスカーレット・オハラがひとりきりになったラストシーンの台詞です。

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