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聞き書きワークショップ

これもつながったことのひとつとなりました。今日は沼津市のNPO法人ユートピアの聞き書きワークショップに行ってきました。期待以上の成果がありました。前半は六車由実さんのレクチャーがあり、続いて6人グループに分かれて「すまいるかるた」を作りました。六車由実さんは民俗学者として大学で教員をされたことがあるだけにレクチャーの内容は構造化されており、柔軟な視点から見いだされた介護民俗学の諸相も言語化されてたいへんわかりやすいものでした。すばらしく明解でした。レジュメの「介護民俗学の聞き書きで結果的に変わってきたこと」の「認知症の利用者さんの言葉や言動が面白く思えるようになった」については、先日読了した森川すいめい著「その島のひとたちは、ひとの話をきかない――精神科医、「自殺希少地域」を行く――」に登場する老人介護施設のエピソードと見事に重なります。そこでは職員がお年寄り一人ひとりをよく知っているので困った言動も理解できるというところです。結果、向精神薬は誰も飲んでいない。その地域はそもそも住民が互いによく知っている関係性があるのですが、「聞き書き」はそのことを意図的積極的に行うものといえるでしょうか。「すまいるほーむ」でのかるた作りの実際の映像も見応えがありました。感銘を受けました。後半は「すまいるかるた」作りです。初顔合わせなのに6人がすぐに活動に集中してたいへん面白く充実した小1時間となりました。「すまいるかるた」作りは森川すいめい氏が指摘するオープン・ダイアローグといくつかの点で共通するものがあると思いました。比べてどちらがどうのこうのいうつもりは毛頭ありません。ほぼ時を同じくしていくつかのベクトルがニアリーな一点を指向しているように思えるところに注目したいのです。飛躍するようですが、文部科学省が進めているインクルーシブ教育システムの構築にかかわって様々な関係性のあり方について示唆をいただいたと考えています。(自殺希少地域については岡檀著「生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)がある」も併せて読まれることをおすすめします)

沼津の滞在時間は5時間弱でしたがたいへん充実した研修でした。そして、沼津への道中もいくつかエピソードがありました。

朝、私が乗った列車はほぼ満席で1両に数人が立っていました。ある駅から乗車した2~3歳の男の子を胸に抱いたお母さんが空いた席を探して前方に歩いていきました。席をゆずらねばと思いましたがあいにく私は窓際の席でためらいがあったとき、通路を挟んだ席の女性がすぐに追いかけて声をかけました。その迷いなくすっと立ち上がる姿は人となりを語るに十分なものでした。その席に着いてお母さんの胸から膝に降りた子どもはお母さんにあやされながら私と1度だけ目を合わせました。私は小首を傾げて口元を緩めました。たったその1回だけでした。でも、終着駅で降りるとき、お母さんに手を引かれて通路に立った男の子は私に左手を振ってくれました。そうなんだ、と何かしら合点がいくものがありました。そして、その時でした。お母さんは胸元がやや大きく開いたデザインの服で大きな傷跡が見えました。関係ないかもわかりませんが動きも少しゆっくりでした。何か大きな事故に遭ったのかも知れません。それは彼女の人生のいくつかの場面でマイナスに作用してきたことだろうしこれからもそうしたことがあるでしょう。人がありたいように日常を生きることの意味を噛みしめた出会いでした。幸せを祈らずにはいられませんでした。そのとき私はちょうどフォーレの歌曲を聴いていました。アメリングとスゼーの歌を聴く度に今日のことをきっと思い出すことになるでしょう。

名古屋駅の新幹線のホームでは赤いスーツケースを引いた黒い服の若い女性から声がかかりました。「どれに乗ればいいですか?」日本語の日常会話はできるものの切符の字と東京行きの新幹線の自由席の乗り方がわからないようでした。私は何を勘違いしたのか英語で応えるとその女性は日本語で話すというやりとりが数回続きました。「時間大丈夫ですか?」と逆に心配してもらってはたと気づきました。日本語で話せばいい。「のぞみが速いですよ」と念を押して別れました。佇まいに品があってどこかしら優雅で教養を感じさせる人でした。日本の女性だったら人がたくさんいる新幹線のホームでわざわざ駅員ではない私のようなおじさんにものを尋ねないはずです。やっぱり外国の人だったのでしょう。声をかけてもらってうれしく思いました。このとき「自殺希少地域」の本を思い浮かべていました。

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